連結納税制度導入のメリット
連結納税制度の主なメリットは以下のとおりです。
所得の通算
これは連結納税制度導入の最大のメリットであり、親法人と子法人の所得の通算が可能であるため、赤字の法人が存在した場合、グループ全体での税負担を軽減することが可能であります。
100%グループ法人 | 所得又は欠損 | 納税額(30%) | |
---|---|---|---|
単体納税 | 連結納税 | ||
親法人 | 1,000 | 300 | 300 |
子法人 (A社) | ▲ 500 | 0 | ▲ 150 |
子法人 (B社) | 300 |
90 | 90 |
子法人 (C社) | ▲ 200 | 0 | ▲ 60 |
グループ間の納税額合計 | 390 | 180 |
上記数値例において、連結納税制度を導入した場合、所得通算効果により、210の納税額を圧縮することが可能となる。
繰越欠損金の利用
従来連結納税開始に伴い、子法人の繰越欠損金は切り捨てとなっていましたが、平成22年度税制改正により、一定の子法人の繰越欠損金は当該法人の個別所得金額に達するまでの金額の合計額(連結所得の金額を限度)を使えるようになることになり、切り捨てとなるデメリットは小さくなります。
子会社の時価評価による税負担の圧縮若しくは繰越欠損金の利用
一定の子法人の一定の資産については、連結納税開始前又は加入前に時価評価が必要となり課税所得が出ている場合には損出しすることで所得を圧縮することができます。また、含み益のある資産を時価評価し、評価益を計上することにより繰越欠損金を有効活用することができます。
100%グループ法人 | 通常の課税所得 | 含み損益 | 繰越欠損金 | 所得又は欠損 |
---|---|---|---|---|
子法人 (A社) | 1,000 | ▲ 600 | 0 | 400 |
子法人 (B社) | 200 | ▲ 500 | 0 | ▲ 300 |
子法人 (C社) | 400 | 500 | ▲ 1,000 | 0 |
- A社は、含み損と通常の課税所得を通算することができ、所得を圧縮する効果が得られる。
- B社は、恒常的に納税ポジションにあり、前期に法人税を納付している場合において、含み損が通常の課税所得を上回り、最終事業年度において欠損となるときは、繰戻還付の適用を受けられる可能性がある。
- C社は、繰越控除期間で控除しきれない繰越欠損金を有している場合には、含み益の計上により当該繰越欠損金を有効活用することができる。(保有資産の簿価をステップアップすることが可能となり、将来の課税所得を圧縮する効果が得られる)
繰延税金資産の回収可能性の向上
法人税相当に係る繰延税金資産の回収可能性の検討を連結ベースで行うため、他の連結会社の将来課税所得の見積額を用いて連結ベースで繰延税金資産の回収可能性を見積もることができます。
グループ内に赤字法人が存在する場合には、一般的には繰延税金資産の回収可能性は低下しますが、例えば、親会社が多額の繰越欠損金を有しており、単体ベースの課税所得では控除し切れない場合には、子法人の課税所得と通算することにより繰延税金資産を単体納税時より多く計上することが可能となります。
組織再編の促進
連結納税制度導入後の連結法人間の組織再編では、組織再編前後における法人税負担に差異が生じないため、組織再編が行いやすくなります。
【例:会社分割を行う場合】
X社は分社型分割を行い、新たにA社及びB社を設立する。
100%グループ法人 | 所得又は欠損 | 納税額(30%) | |
---|---|---|---|
単体納税 | 連結納税 | ||
親法人X社 (分割法人) | 1,000 | 300 | 300 |
子法人A社 (分割継承法人) | 500 | 150 | 150 |
子法人B社 (分割継承法人) | ▲ 400 | 0 | ▲ 120 |
グループ間の納税額合計 | 450 | 330 |
会社分割により法人格が分裂したとしても、連結納税制度を適用すれば納税額への影響は生じず、円滑な組織再編が可能となる。