連結納税制度の概要

連結納税制度とは、法人税の申告制度のうち、企業グループを課税対象として、法人税を申告する制度であり、その対象とする企業グループとは、100%支配関係のある内国法人であります。

平成22年度税制改正により、グループ法人税制が創設され、100%支配関係のある内国法人を有する企業グループに対しては連結納税制度を適用しておらずとも「グループ法人単体課税制度」が強制適用されることとなりました。また、併せて「連結納税制度」の導入の促進を意図した制度改正も実施されました。  

よって、企業グループの活動に対する税制は以下の図のとおりとなり、グループ法人税制の枠組みの中で連結納税制度を戦略的に選択適用することが必要となると考えられます。

企業グループの活動に対する税制

以下は、平成22年度税制改正により、グループ法人税制に包含される「連結納税制度」と「グループ法人単体課税制度」との比較であります。

  連結納税制度 グループ法人単体課税制度
適用方法 申請による選択適用となる。
(3か月前までには申請が必要)
企業グループを有する企業は強制適用となる。
グループ内の
各社の所得通算

所得を通算する。
グループ内に欠損法人があれば連結所得は減少する。

親法人の連結納税制度導入前の繰越欠損金はグループで利用可能である。
一定の子法人が連結納税開始又は加入直前において有する繰越欠損金は特定連結欠損金額として、連結事業年度の連結所得の計算上、当該子法人の個別所得金額を限度として繰越控除することが可能である。(平成22年度税制改正前は、子法人が有していた繰越欠損金は、連結納税開始又は加入時にすべて切捨てられていた)

所得を通算しない。
時価評価 一定の子法人については、連結納税導入時または、連結納税に加入時に一定の資産について時価評価が必要である。 資産を時価評価する規定はない。
みなし事業年度 決算期が異なる子法人については、みなし事業年度として親法人の決算期に仮決算を行う必要がある。 決算期の違いに考慮する必要がない。
グループ内の
一定規模の
資産の譲渡取引の
譲渡損益
当該資産の連結納税グループ外への移転等の時まで譲渡損益を繰り延べる。 当該資産の企業グループ外への移転等の時まで譲渡損益を繰り延べる。
グループ内の寄附金 寄附金の支出側は損金不算入、受け手側は益金不算入とされる。(従来は受け手側では益金算入されていた) グループ法人間の寄附金は、支出側は損金不算入、受け手側は益金不算入とされる。
グループ内の
受取配当の
益金不算入制度に
おける負債利子控除
負債利子控除は不要。(課税所得は減少) 負債利子控除は不要。
親会社が
大法人(※1)の際、
中小法人(※2)である
子会社の
中小法人特例の適用
親法人の資本金を基準に、親法人が大法人であれば、連結納税グループに属する全ての子法人に中小法人特例を適用できない。 大法人である親法人の資本金が5億円以上である場合には、その子法人には中小法人の特例のうち以下のものが適用できない。
(軽減税率、留保金課税不適用措置、貸倒引当金の法定繰入率、交際費の定額控除制度、欠損金の繰戻還付不適用措置の適用除外)

※1 大法人:資本金1億円超の法人
※2 中小法人:資本金1億円以下の法人

グループ法人単体課税制度の創設により、従来、連結納税制度のデメリットとされていた規定が単体課税制度の中でも適用されることとなり、連結納税制度導入のデメリットが少なくなりました。加えて、連結納税制度特有のデメリットであった、子法人の繰越欠損金の切り捨ての規定が緩和され、連結納税制度を活用しやすくなったといえます。 

連結納税制度導入のメリット