連結納税制度導入のデメリット

連結納税制度に係る事務負担の増加及び継続適用の要求

連結納税制度は一旦選択すると任意に取りやめることはできません。
また、連結納税制度の導入には専門知識が不可欠であり、連結ベースでの申告作業が必要なことから事務負担が一般的に増加することになります。

ただし、事務負担の軽減を図るため等の理由から、申請の期限が従来は連結納税開始の6ヶ月前までであったのを、3ヶ月前までに申請するものと短縮されました。これにより、連結納税の効果を十分に検討した上で、適用の申請が可能となります。

子法人の繰越欠損金の利用制限

連結納税制度開始の際の子法人の繰越欠損金のうち、一定の子法人のものは切り捨てられないことになりますが、時価評価が必要な法人(主としてグループ外から連結納税開始前5年以内に買収した法人)は繰越欠損金が切り捨てられてしまいます。

連結納税開始直前における各社の繰越欠損金

100%グループ法人 連結納税制度導入
直前の繰越欠損金
時価評価の有無 連結納税制度に
持ち込める繰越欠損金
親法人 0 0
子法人 (A社) ▲ 1,000 ▲ 1,000
子法人 (B社) ▲ 500 0
合計 ▲ 1,500   ▲ 1,000

連結納税制度導入により、時価評価対象法人であるB社の繰越欠損金は全て切り捨てられることになります。

子法人の時価評価に伴う納税負担

子法人の時価評価が行われ、評価損が生じたことにより欠損となった場合には、連結納税開始又は加入直前に有する繰越欠損金は切り捨てられてしまい、また評価益が生じた場合には追加の納税負担が発生してしまいます。

100%グループ法人 通常の課税所得 含み損益 繰越欠損金 所得又は欠損
子法人 (A社) 1,000 500 0 1,500
子法人 (B社) ▲ 500 ▲ 300 0 ▲ 800
子法人 (C社) ▲ 100 ▲ 500 ▲ 1,000 ▲ 600
  • A社は、通常の課税所得の他含み益が生じるため納税負担額が重くなる。
  • B社は、通常の課税所得がマイナスであり、かつ、含み損が生じるため、最終事業年度において欠損となるが、繰戻還付を受けられない場合には、最終事業年度における欠損800はすべて切り捨てられてしまうことになる。
  • C社は、恒常的に欠損ポジションのため繰越欠損金を有しており、また、含み損を有している。この場合、連結納税制度を導入すると、最終事業年度における欠損600(通常の課税所得▲100及び含み損500の合計)及び繰越欠損金1,000はいずれも切り捨てられてしまうことになる。

子法人の中小法人向け特例措置の不適用

親法人の資本金が1億円超の場合(大法人の場合)、連結納税制度を導入すると、子法人を含めた連結納税グループに属するすべての法人について、中小法人向けの特例措置が適用できなくなります。しかし、グループ法人税制の創設により、親会社の資本金が5億円以上の場合の子会社も中小法人向けの特例措置が一部適用できなくなることになるため、親会社の資本金が5億円以上の場合には、それほどデメリットが大きくなりません。

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