日本の動向

企業会計審議会・企画調整部会より2012年7月に公表された「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方についてのこれまでの議論(中間的論点整理)」により、IFRS任意適用の促進の重要性が改めて認識されたことを受け、2013年6月以降、以下のような取組が進められています。

(1)金融庁の取組

①IFRSの任意適用要件の緩和
2013年10月に公表された「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」により、IFRSの任意適用要件は、「IFRSによる連結財務諸表の適正性確保への取組・体制整備をしていること」のみとされ、その他の2つの要件は削除されました。

②単体開示の簡素化
2014年3月に公表された「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」により、会社法の水準に合わせて単体財務諸表の様式が改定されました。また、連結財務諸表で十分な開示がされている項目については、単体注記・附属明細書等の開示の省略が認められました。IFRSが適用される連結財務諸表作成への企業側の工数に配慮し、単体開示が簡素化されたものです。

③IFRS適用レポートの公表
2014年6月に閣議決定された「「日本再興戦略」改訂2014‐未来への挑戦‐」における「IFRSの任意適用企業の拡大促進」を受け、2015年4月に「IFRS適用レポート」が公表されました。

(2)企業会計基準委員会(ASBJ)の取組

①IFRSの適用の方法
個々のIFRSを特段の修正をせず日本基準として採択可能かを「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」(2013年6月 企業会計審議会・企画調整部会)にしたがって判断する手続が進められています。

②修正国際基準(JMIS)の策定
2014年7月に「修正国際基準(国際会計基準と企業会計基準委員会による修正会計基準によって構成される会計基準 “Japan’s Modified International Standards (JMIS):Accounting Standards Comprising IFRSs and the ASBJ Modifications”)」の公開草案が公表されました。その後、2015年6月に基準として公表されました。

(3)自由民主党の取組

2014年5月に公表された「日本再生ビジョン」において、「会計基準等、企業の国際化、ルールの国際水準への統一」が提言されています。具体的な項目は以下の4項目です。

  • 会計における「単一で高品質な国際基準」の策定へのコミット
  • IFRSの任意適用の促進
  • JPX新指数に採用された企業への要請
  • IFRS適用に関する企業の考えの開示や「IFRS適用レポート(仮称)」作成の要請

上記の他、日本基準における「のれんの償却」は日本企業のM&A促進の妨げになり、IFRSにおける「のれんの非償却」を採用する国際企業に対し競争力を弱めている可能性があるため、IFRSへの早期移行の重要性が指摘されています。

(4)政府の取組

2014年6月に閣議決定された「「日本再興戦略」改訂2014‐未来への挑戦‐」においても、「自由民主党」の取組と同様な提言がされています。

(5)東京証券取引所の取組

①会計基準の選択に関する基本的な考え方の開示
2014年6月に閣議決定された「「日本再興戦略」改訂2014‐未来への挑戦‐」における「IFRSの任意適用企業の拡大促進」を受け、上場企業は2015年3月期に係る決算短信から会計基準の選択に関する基本的な考え方を開示することとなりました。

②JPX日経インデックス400
国際的な投資基準に求められる諸要件を満たした「投資家にとって投資魅力の高い会社」で構成する新指数「JPX日経インデックス400」が開発されました。同指数に含められる企業の選定基準には定量的な要素の他に、定性的な要素による加点項目があり、IFRSの採用や採用の決定が加点要素となっています。

(6)IFRS任意適用会社数

東京証券取引所が公表する「IFRS適用済・適用決定会社一覧」によると、2016年2月現在におけるIFRS適用済会社は71社、適用決定会社は31社となっています。適用時期ごとの会社数の推移は以下のとおりで、IFRSの任意適用会社数は今後も着実に増加し続けていくことが見込まれます。

【図表1】

時期 適用企業 適用予定企業
2010年 1社
2011年 2社
2012年 2社
2013年 11社
2014年 14社
2015年 34社 2社
2016年 7社 12社
2017年 15社
2018年 1社
2019年 1社
合計 71社 31社

世界の動向>